DTM とか DAW とかに限らず、音楽をやっている人なら少なからず音質劣化を気にしたことがあるのではないかと思います。
シールドを高いものに変えたりとか、エフェクターを使っていない時には完全にバイパスできるようにしたりとか。
古い話になると、出来るだけピンポンせずにレコーディングするとか。

私は音質劣化にうるさい方ではないと思っていますが、明らかに音痩せしたりするのは勘弁なので、いろいろ気を使っています。
が、それはあくまでもアナログの話で、デジタルオーディオについては全くと言っていいほど気を使っていませんでした。

何故か？
それは、「デジタルデータが劣化する」という概念を、全くと言って良いほど理解できなかったからです。

ギターに関して言えば、ギターとアンプの間の各種エフェクターとかシールド、アンプからオーディオI/Oに入るシールドなんかをアップグレードすると「音が良くなる」ってのは、容易に理解できます。
アナログの信号ですからね。
が、オーディオI/O と PC を繋いでいる Firewire ケーブルを換えることで音質が向上するという話は全く理解できませんでした。

ネット経由でもメディアからのコピーでも何でもいいですが、普通に考えてデジタルでデータを転送する際に劣化などは起こりません。
正確に言えば、伝送損失は必ず発生するので信号自体の劣化は発生しますが、転送結果のデータを中心に考えた場合、劣化と言うよりも転送のリトライが増えるようなイメージで、ユーザー側からしてみれば転送にかかる時間が増えるだけでけして劣化しているという表現にはならないと思います。

伝送損失が非常に大きい場合にはファイル自体が破損する場合もありますし、リアルタイムで処理するようなデータの場合には転送が間に合わずに処理がエラーになるなる場合もありますが、正常に転送された場合には、どれだけ伝送損失が発生していようが、どれだけ時間がかかろうが転送前と転送後でデータは同一の物になっているはずなのがデジタルデータだと思っていました。
（これはあくまでも私の勝手な予想です。合ってるかどうか分かりません。）

また、音で言うならアナログの音質劣化って「音痩せ」に代表されるような感じのペナペナしたしょぼい音になる文字通りの「劣化」と、伝送経路で混ざってしまったノイズと 2パターンあると思いますが、デジタルデータのエラーの場合は「音が悪い」なんて言うレベルではなく、ぶつ切りの音声になったり、ノイズとしか言いようのないヒドイ音になります。
（CD の音飛びとかに近いイメージですね。）

もちろん、私の環境で上記のような現象は発生していませんが、高級なケーブルを使っているわけでもなく、ハッキリ言って製品に付属のケーブルです。

高級なデジタルオーディオケーブルがこの様な現象への対策として存在しているとは思えないし、このような現象を回避したとしても「ケーブル換えると音が良くなる」とは言えないので、眉唾としか思ってませんでした。

が、違ったんですね。
原理的にデジタルオーディオデータと言うのは劣化する可能性がある信号だったんですね。

デジタルなのになぜ音が変わる? - かないまるのホームページ

このページはソニーの主幹技師「金井隆」さんのホームページの一部なんですが、素晴らしい内容です。
まさに目から鱗ものの内容が色々なところで出てくるのですが、「デジタルなのになぜ音が変わる?」なんて・・・
まさに私が長年持ち続けていた素朴な疑問、というか誤認を見事に氷解してくれたコンテンツでした。

---

私はオーディオマニアではないですし、聴く行為に対して要求があまり高いタイプではないので、いわゆるピュアオーディオ系の知識は皆無です。
なので、金井さんのこともまったく知らなかったのですが、その筋では有名な方のようですね。

そんな私が金井さんのことを知るきっかけになったは以前から購読している「藤本健の週刊 Digital Audio Laboratory」の『「かないまるルーム」で生まれる究極のSACDとは?』という連載記事を見たからなのですが、この記事は本当に面白かったですね。

藤田恵美（Le Couple）の「camomile Best Audio」という作品の製作過程のインタビュー記事なんですが、何と言うか、製作サイドと実際のリスナーとの考え方の違いというのが非常に分かりやすく書かれていると思います。

---

とにかく、金井さんの HP のコンテンツは私にとっては目から鱗的なコンテンツばかりでした。
いい機会なので、少し考え方を改めてみたいと思います。

とくにサラウンド周りは勉強が必要ですね。
実体験としてサラウンドを味わってないので全く理解できません。

SACD にも凄く興味があるのですが、再生環境がないので PS3 を買おうかと本気で悩んでいます。