特捜神話の終焉 - 郷原 信郎

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郷原 信郎さんの本は何冊か読んだ事があったんですが、この本も面白いです。
と言うか、考えさせられる。

扱っている事件が非常に有名な物ばかりと言う事もありますが、実際の当事者との対談形式なので臨場感があります。

郷原 信郎さんは元検事という立場でありながら、検察批判を展開している数少ない人です。
組織を辞めた人が、元の組織を批判する事は良くあることだと思うのですが、検察OBによる検察批判と言うのは少ないそうです。
ではなぜ、元検事が検察批判をする事がまれなのか?っと言う事も本書を見れば何となく理解できるのではないかと。

対談相手も素晴らしい組み合わせ。
ライブドア事件のホリエモンこと堀江 貴文、キャッツ事件の細野 祐二、外務省背任事件の佐藤 優と、三者三様の実体験からくる素晴らしい意見や感想を語っています。

私はキャッツ事件に関しては名前くらいしか知らなかったのですが、その他の2つの事件に共通するのは「で、結局なんだったの?」って事ですよね。
この本に登場している事件は、検察組織が抱える問題を分かりやすく示している3例だと思います。

郷原さんが一貫して言っている「検察組織に経済事件は扱えない」と言う意見、これも本書を読むとなぜ無理なのかが良く分かると思います。

そして、ここが一番の肝だと思いますが、現在の検察と言う組織の実体がこの本に書かれている通りだとしたら、ある日突然身に覚えのない罪で逮捕・起訴されてしまう可能性が誰にでもあるという事です。

日本においては「推定無罪」なんてものは実際には有りません。
多くの事件で判決が確定する前に、もっと言えば逮捕された時点で、大抵の場合その人の人生はメチャクチャになる訳です。
たとえ逮捕後に疑いが晴れて無罪となったとしても、元の生活に戻るのは色々な意味で難しいでしょう。

これは、メディアの報道の仕方にも問題があるとは思いますが、それ以上に受け取る側、われわれの問題も大きいと思います。
そういう部分も含めて色々と考えさせられる本だと思うので、機会があればぜひ読んでみてください。

それにしても、毎回思いますが佐藤優さんの話は面白い。
視点が他の人と違い過ぎてビックリしますが、突拍子もない話なのに妙に納得させられてしまうのは何故でしょうね。

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