孤狼―刑事・鳴沢了 - 堂場 瞬一

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堂場 瞬一の刑事・鳴沢了シリーズの4作目。
個人的には「ここまで我慢してきて良かった」っと正直思ってしまいましたが、本作は刑事・探偵物のミステリーとして楽しめる作品だと思います。

っと言うのも、「孤狼」までの、「雪虫」「破弾」「熱欲」の3作が何とも言えない読後感だったから。

じゃぁ、なんで読んでるの?
って感じですけど、それは(たぶん)全巻家にあるから(笑)

私の両親はミステリー好きで、この手のシリーズものを大人買いして読んでるんですが、たしか昨年の夏に実家に帰った時に借りてきたので全巻あるんです。

なんでも、「主人公が新潟(市)出身で、東京で住んでるところが多摩市。聖蹟桜ヶ丘も出てくるよ。」っと言うことで、「俺にお勧め」っとなったらしい。。。
で、半強制的に荷物の中に入っていたという感じ(笑)

なので、読みだした訳ですが・・・
なかなか読むのに忍耐がいる作品だったので、4作目まで来るのに結構時間がかかりました...

まず1作目の「雪虫」からして、とにかく後味が悪い。
途中から嫌な予感がするんだけど、「あぁ、やっぱり・・・」っと言う感じで凄く暗い気分になるというか、とにかく救いがないラスト。

で、続く「破弾」も、やっぱり後味が悪い(笑)
こちらも途中から何となく「え?まさか・・・」見たいな感じで、やっぱり嫌な予感がするんですよ。
しかも、パターンとしては「雪虫」と似たようなパターン。
で、やっぱり救いが無い後味の悪い結末を迎えるんです。

ここまでの2作に共通して言えるのは、主人公の「鳴沢了」が全く魅力的じゃないこと(笑)
っと言うか、むしろ読んでてイライラするキャラ設定。

何というか、真面目過ぎる設定と言うんでしょうか?
真面目過ぎて笑えるならいいんですが、全然笑えないし、人間味が無いんですよねぇ。

なので、主人公は警察内部で孤立している設定なんですが、「そうだろうね。」っと思うだけ(笑)
もう、ビックリするくらい感情移入できない

なので、結末が主人公にとって最悪な内容になっていても、「可哀想」とか思えないから微妙なんです。


3作目の「熱欲」は少し、良くなっているというか、主人公に少し人間味が出てきますが、話的にあまり面白くないという感じ。

雪虫」「破弾」は事件の真相に迫っていく部分は面白いんですけど、圧倒的に話が暗過ぎてキツイと言うのに対して、「熱欲」は全体のトーンとしては暗すぎなくて良いんですが、事件部分が何とも言えない盛り上がりのなさで微妙という感じ。

というか、展開がパターン化している感じがして、読んでいてマンネリ感がありました。


で、「孤狼」。
これは、刑事・探偵物のハードボイルド小説として普通に面白い作品になっています。

相棒、恋愛、再会などの要素に加えて、孤立、騙し、援護のようなミステリーになくてはならない面白要素が良い具合に出てきて「ページをめくる手が止まらない」作品になってます。

そして、主人公が家族や結婚・仕事のことで悩んだりと、人間味が出てくることで一気に魅力的に描かれているというか、感情移入できるようになっているのがデカイですね。

シリーズ4作目にしてやっと、爽快な気分で読み終えることが出来た作品です。

ハッピーエンドって感じではないんだけど、凄く前向きな終わり方で、次回作が読みたくなる終わり方。

「刑事・鳴沢了」シリーズを読んだことが無くても、この「孤狼」から読んでも十分に楽しめる作品だと思います。
っと言うか、これを読んで面白いと思ってから「雪虫」から読み返した方が良いかもしれないです。

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